のんびりmathematicー数学主婦のブログ

大学院まで数学を専攻していた主婦によるのんびりブログ

中学校までは数学が得意だったあなたへ

中学校までは数学が得意だった。

と、よく聞きます。

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今年入って、何人に言われたか、わからないくらい、よく聞きます。なので、とてもよくある現象なんだと思います。

 

この「中学校までは数学が得意だったのに、高校の途中からわからなくなって…」とおっしゃる方たちって、みなさん素晴らしい方なんです。

 

お仕事頑張っていたり、お子さんを育てていたり、社会的な活動を頑張っていたり…

地に足をついて、しっかり社会で生きてるなあって感じがする素晴らしい方ばっかりです。ぐーたら主婦である私は、尊敬してます。

 

逆に、数学科にいた学生や先生は「この人たち、一体どうやって生きていくんだ…」と思い悩んでしまうほど不思議な人たち大集合だワイワイみたいな感じで(特に先生の方)、それはそれで面白かったんですが、まあ、とにかく不思議な人たちでした。

(この不思議な人たちエピソードも、いつか書きます)

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というわけで、この「中学までは数学が得意だった」現象を分析していきたいと思います。読むの面倒だな…と思った方は、「9.だから三角関数は難しい」から読んでみてください!

 

1.学校で暴れてしまうAくん

本論から外れた話から始めます。すみません。

 

大人になってから「色んな角度から物事を見なさい」と、よく言われます。

私はそういう器用なことは一切できませんが、「確かにそうだよなー」と思うんです。

 

例えば、学校で暴れてしまう傾向があるAくんという小学生がいるとします。

先生たちは、「Aくんは悪いことをしている!やめさせなければ!」と思って、叱ったり怒鳴ったり、放課後に呼び出して説教したり、長文の反省文を書かせたりしていましたが、一向にAくんがおさまる気配はありません。

そんなある日、担任のB先生は、家庭訪問に行って大変な事実に気づきます。Aくんの家は荒れ放題で、実はAくんは給食以外、何も食べずに毎日を過ごしていたのです……

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福祉や教育の勉強をすると、こういう話は多々ケーススタディとして出てきますよね。

「学校でのAくん」だけに注目していてはダメで、「家庭でのAくん」も知って、初めて色んなことが浮き彫りにされてくる、という。

 

私は専門家ではないので、「こういうケースは○○するべきだ」とか、そういうことは何も言えないのですが、「Aくん」という人を、色んな角度から見ることは、かなり大切だなあ、とは思います。表層上のことだけでなく、それ以外のことを知ろうとするのって、労力がいるし、私にはうまくできないけれど、とっても必要で大事なことですよね。

2.代数・幾何・解析

急に数学の話に変わります。すみません。

 

大学に入ると、大まかに言って、数学は「代数・幾何・解析」という三分野に分かれます。それぞれ、中学・高校数学に準えて簡単に言うと、

 

代数因数分解・方程式など

幾何:合同・相似・図形の性質など

解析:関数・グラフ・微分積分など

 

です。(※大学からは、各々若干イメージが変わります)

 

重要なのは、三分野がハッキリクッキリと分かれているわけではなく、密接に関わりあっている点なのです。

3.ζ関数は架け橋

大学院時代、「夏季講習」的なものを受けたことがあって(普通に大学で実施されるもの)、私のような人には難しくって何のこっちゃわからない授業だったのですが、唯一覚えているのが、

 

「ζ関数は、代数と解析の世界を繋げた」

 

という話なんです。

素数の研究って、「代数学」の分野のお家芸みたいなものなんですね。

一方で、ζ関数という「解析学」の研究対象として捉えられるものが、なんと不思議なことに素数とすごく親和性が高くって。そのために、代数と解析の世界を繋げる架け橋みたいになった、ということらしいです。

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なんか夢みたいで、素敵な話ですよね。ζ関数は、虹の架け橋…みたいな。

4.ζに苦しめられる私

しかし、一方で、私のような才能のない愚か者にとっては、「代数と解析が繋がる」っていう話は、決して幸せな話ではないのです!!!

代数学系の研究室に在籍していた私は、ζ関数と対峙する度に、専門ではない解析学の本を引っ張り出してこなくてはならない…という状態に苦しみました。

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もちろん、代数も解析も「数学」という同じ枠の中に存在するものなんだけれど、別々に発展して追及されてきた知識とか技術が、わんさかあるんです。

 

喩えて言うならば、

ピアニストが、ギターも弾けなきゃいけない

サッカー選手が、野球もできなきゃいけない

みたいな状態に陥ったという…。

どちらも「楽器」だけど、色々違う。どちらも「スポーツ」だけど、色々違う。

 

もちろん、「全く触れたことない」って人よりは、できるかもしれないけれど、それでも、かなり大変なわけです。つらいです。ぜつぼうです。

5.三角関数の難しさ

急に、高校数学の話に変わります。すみません。

 

三角関数で挫折した!!」って声を、それはもう頻繁に聞きます。

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色々と挫折を促す要因はあると思いますが、

少なくとも、三角関数の単元って、代数・幾何・解析の全視点を踏襲し、極めて意識的に切りかえる力を必要としているなあって思うんです。

 

「式です!変形しましょう!合成しましょう!」(代数)ってときと、

「単位円です!直角三角形です!角度に注目!」(幾何)ってときと、

「グラフです!うねうねです!最大値は?最小値は?」(解析)ってときと、

 

それぞれが、入り乱れて存在しているわけです。

三角関数は、「単位円の座標から、sin cosを定義する」という、たった一つのシンプルなスタート地点から始まるのですが、そこから世界は広がりまくり、広がりすぎて、色んな視点で様々に眺められる、そんな豊かな世界になっちゃったんですね。

 

そのため、世界を認識するのに、あっちから見て…こっちから見て…とコロコロ視点を切りかえなくてはならない。それは、もう大変で、大忙しです。

6.Aくんを見つめる覚悟

暴れてしまうAくんの話に戻ります。すみません。

 

家庭訪問をして、「家庭でのAくん」という新たな視点を持ってしまったB先生。たぶん、家庭訪問の後、B先生は大いに悩み、そして、考えるのだと思います。

考える内容の詳細は、B先生自身しか知りえないかもしれません。でも、B先生が「悩んで考える」ということは、ほぼ確実だと思うんです。

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それは、「学校でのAくん」という層と、「家庭でのAくん」という層の二つを知ってしまったから、その二つが重なり合い、干渉し合った「新しい層」に対し、思いめぐらせなくてはならなくなるからだと思います。

そして、その重なり合った「新しい層」は、「単純ではない」ということをB先生に気づかせていきます。そして、「今までより、もう一段深く考えなさい」と教えてくれるはずです。

 

それを引き受けるB先生には、恐らく、とっても大きな覚悟が必要なんだと思います。

7.色んな角度から物事を見なさい

そんなわけで、「色んな角度から物事を見る」というのは、

物事の深淵さに気づくこと

に繋がっていくと思います。

 

ある視点で見て認識できたことの層と、別の視点で見て認識できたことの層が、重なり合い、干渉し合い、「新しい層」ができる。その「新しい層」は、今まで見てきた層より、もう一段深くにあるはずです。ふしぎなグラデーションを持ちながら。

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そして、「新しい層」は「もっと深く考えなさい。そんなに単純じゃないから。」とピリリとした空気で教えてくれます。

Aくんの例の場合は「大変だ…どうにかしなきゃ…」という感じになりますが、それが学問的な対象の場合、「難しい。でも、面白い。」をググッと引き出してくれるように思います。

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ガリレオ先生の「実に面白い」ってやつですね。

8.B先生の覚悟

B先生は、覚悟を決めたら、「家庭でのAくん」のことも知ろうとすると思うんです。

でも、B先生は、「学校でのAくん」は、よく知っているし、知りやすいけれど、「家庭でのAくん」を知ることは難しいはずです。

 

こんな風に「新しい別の視点」を着実に得ることは、結構大変だと思います。特に、その「新しい別の視点」が、親しみのない視点である場合は、余計に大変です。

 

それは、私がζ関数と対峙するとき、慣れてない「解析学」の文献を引っ張りだして、「ひーひー」苦しんでいたのに、少し似てる感じがします。

 

「新しい視点の必要性」から、ピリリとした「深淵さ、難しさ」を予感し、そこから「対象と対峙しよう」と覚悟を決めたら、まずは「新しい視点の着実な獲得」にしんどさを感じる。まだまだ、やることはたくさんあるのに、この時点で既に大変です。

9.だから三角関数は難しい

AくんとB先生の話から、長々まわりくどく説明しましたが、

「色んな視点で見る」ことが必要になると、一気に大変になる

ということが伝えたかったのです。

 

代数・幾何・解析という3つの視点が重なり、干渉し合い、ふしぎなグラデーションをつくっているのを、じっくり眺めなきゃならなくなる。

そんな大変さが、数学Ⅱ(三角関数を含む)くらいから、ハッキリと表出してきます。

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中学数学であっても、「色んな視点で見なきゃいけない」ケースはありますが、「定期試験」というレベルで言えば、一つの視点だけで解けてしまって、点数が稼げてしまうケースが多いと思うんです。

方程式を解く問題!相似の問題!グラフの問題!みたいに。一つの方向からだけで戦えちゃう。

 

でも、高校数学からは、「3つの視点で見てくださいね」と徐々に徐々に要求され始め、しかも、その声がどんどん強まっていくので、大変なのです。

 

繰り返しになりますが、

「新しい視点の必要性」から、ピリリとした「深淵さ、難しさ」を予感し、そこから「対象と対峙しよう」と覚悟を決めたら、まずは「新しい視点の着実な獲得」にしんどさを感じる。まだまだ、やることはたくさんあるのに、この時点で既に大変です。

 

覚悟を決められなかったり、しんどさに負けてしまったりしたら…

その時点で「諦める」という結果になってしまうのです。

10.高校数学を諦めた人へ

たぶん、高校数学を諦めた人って、要領がいい人だと思うんです。現実世界を、しっかり生きれらる強さがあって。本当に羨ましいです。

 

要領がいい人の長所って

厄介なことを、一旦傍に置いておける

ところだと思います。細かいことは置いておき、先に進め、より速く結果を出せる強さ…素敵です。素敵すぎます。

 

たぶん、「高校数学がわからない」っていうのは、その長所が、少し裏目に出てしまったんだと思います。

高校数学の途中から、「厄介なことを、傍に置かない。疲れるけど、考えてみよう。」みたいなことが必要になってきてしまうから。

 

要領のいい人って、やる気出せば、できちゃうと思うんです。でも、コスパを算出して「やらない」って判断を下せる。

 

理系分野のことに詳しい人は、よくご存知だと思うんですが、数学の勉強や研究って、異常なまでにコスパが悪くて大変です。労力と時間を多量に要するのに、結果がめちゃくちゃ出にくい。

「やらない」と言える人は、それをちゃんと予見してるのかもしれません。

 

中学と違って、高校に行けば、ハッキリと文理選択ができるから、「私はもうこれ以上、数学をやりません!」っていう生き方も、当たり前に認められることです。

何の問題もないわけです。

 

「厄介そうだし、なんか難しそうだし、面倒だし、コスパ悪いし、やらない」を選んでOKで、何も悪いことではありません。

 

でも、

でも、

でもですよ、

大人になると、「厄介な難しさから引き出される、何とも言えない面白さ」を味わえるようになってくるじゃないですか。

 

だから、たぶん、今なら三角関数、楽しいと思いますよ!

 

重力波の研究もノーベル賞とりましたし…

電気も音も磁力も光も波ですし…

世の中全て波だらけですし…

「波」のことを知るなら、まずは三角関数と仲良くするのが良いんじゃないかなあ、と思います。

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理系じゃなくても、一般向けのサイエンス関連の文献・TV番組・ネット記事を見たり読んだりする方って、とても多いですよね。それも、「面白そう!」ってワクワクしながら。

 

そのワクワクに、ぐぐっと深みを出すために、サイエンスの母国語である数学について知ったり学んだりするのって、とてもとても良いんじゃないかなあ…って思うんです。

そして、そういう深みに触れながら得た知識が「教養」と呼ばれるモノなんじゃないかしら…とも思ってます。

 

なので、良かったら、もう一度、三角関数にチャレンジしてみてください!

三角関数ブログ、ぼちぼち書きます…!!

 

(私も、もう一度、ζ関数を学んでみようかなあ…)

 

要領が悪い私も少しずつがんばるので、

あたたかな教養を、のんびり身につけていきましょう♡

 

(おしまい)